高齢者虐待(身体拘束)は全てが悪なのか?
こんにちは。
今日は、高齢者虐待についてです。
全ての身体拘束が悪なのか?という事について現場の人間として個人的に感じることを書いていきたいと思います。
結論としては、やむを得ない場合もあると感じます。
それは、家族の愛情を感じられるケースがあるからです。
高齢者虐待とは、
①身体的虐待
②性的虐待
③心理的虐待
④経済的虐待
⑤ネグレクト(放棄・放任)
上記5つの項目に分けられます。
今日のテーマは、その中でも①の身体的虐待(身体拘束)についてです。
身体拘束については、心理的虐待とも取れますね。
(今日の内容として、「虐待」という言葉が正しいのか?ということはありますが、敢えて虐待と書きます。)
・身体拘束の例としては、ベッド柵を4点全て設置する。
・つなぎを着せる
・ミトンを着ける
・外カギを掛ける
・2つ以上の鍵、サムターンカバーやチェーンを外から掛けて本人が開けられないようにする若しくは出られないようにする等
・電話が出来るのに通信機器を置かないということも身体拘束に当たる可能性もありますね。
この様に本人の意思に反してそれを出来なくさせることが身体拘束に当たるわけです。
担当ケースで多いのは、ベッド柵を4点全部つけたがる家族です。
「ベッドから落ちてしまうと困るから」
「ベッドから降りて一人で歩いて転ぶと危ないから」という理由が多いです。
施設は勿論ですが、在宅でもベッドの4点柵は当然虐待に当たります。
今は、福祉用具の方でも4点柵はレンタルさせてもらえないですね。
でも、以外と在宅医療の先生の中でもご存知ない先生がいらっしゃって、「え?ダメなの?」と言われることもしばしばあります。
ベッド柵以外だと徘徊してしまう認知症高齢者の場合は、外からカギやチェーンを掛けて一人で出られないようにするというケースもあります。
こちらは、徘徊防止策です。
「おばあちゃんが一人で外に出て事故に遭ったらどうしよう?」
「また警察に保護されたら困る」そういった理由が多いです。
この場合は、認知症を発症していることが多いので要介護者が一人で出歩ける身体状況にないのに出歩いてしまうというケースもありますから、その心配ももっともな話であります。
家族にもそれぞれ仕事や家庭の事情がありますから、在宅介護ではこういった問題は良くあることだと思います。
在宅では、施設と違って在宅ではそれぞれ環境が違うので、どうしても家族がそうしないと対応できないという場合もありますが、こちらとしてはそれを家族に虐待であるということを伝えていかなければならない立場にあります。
虐待であるということを伝えるのは、簡単ですが・・じゃあ代替え策は?その代わりに出来うる対策は?となるとそれが見つからない場合は結局それを継続せざるを得ない場合もあります。
ここがいつも悩みどころです。
そういう場合に、こちらが出来る事としては、まずは地域包括支援センターに相談、報告。
地域包括支援センターから区役所に報告という形を取ります。
高齢者虐待については、通報者の守秘義務が守られます。
私の場合は、担当ケアマネージャーですので、それについては目の当たりした場合は家族にはそれが身体拘束に当たることを説明したうえで、改善出来ない場合に地域包括支援センターに報告を入れます。
報告を入れていることは、家族には伝えない場合が多いですが、あまりエスカレートするようなら包括の人も一緒に訪問することがあります。
もしくは、包括支援センターの方主催で地域ケア会議を開いてもらう場合もあります。
在宅で重要なのは、そういった状況に気づいたら直ぐに関係事業者間で情報を共有して、然るべき機関に相談を入れることで情報共有をはかり一人で抱え込まないことです。
すぐに改善策が見つからない場合が多いかもしれません。
何故ならそこには家族の愛情や介護に対しての思いがあるからです。
私は、いつもここが難しいなと感じます。
介護に協力的な家族ほどこういう問題にぶつかりやすい傾向にあります。
要介護者に対して心配する思いやもっと良くなって欲しいという思いが強いが故にベッドから落ちないようにとか一人で外に出て転ばないように等等・・そこには要介護者に対する気持ちがあるからです。
特に認知症高齢者に対する対策は本当に難しいです。
外カギ、チェーン、サムターンカバー等考えられる拘束はいくつかありますが、ご家族の一人で外に出て事故に遭ったら困るという心配も分からなくもないです。
実際に、現場で仕事をしていると「本当にだめなのかな?これしか方法ないけどな」と思う事があります。
だから、全ての虐待が悪なのか?というと私は全てが憎しみから生まれているわけではないので、家族に対して「それは虐待です」というのが心苦しい時もあります。
こういうケースに向き合ったときに、やはり法律だけでは解決出来ないことがあり、グレーな部分をカバー出来る法律が出来るといいなと思います。
こんなケースを見かけたら、まずは一人で悩まず相談することが大切だと思います。
当事者のご家族であってもまずは担当のケアマネージャーや関係事業者に相談することが大切です。
介護される側も介護している側も同じ人間です。
まして親兄弟であれば尚のこと心配もあり、悩みも尽きないと思います。
そのための介護保険制度でありますから、出来うる限り活用して一緒に考えていけたらよいと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。